2014年2月2日日曜日

”間違い”の愉しみ方 〜「いやげ物展」と「南部鉄器展」

先週、東京に行く機会があり、
空いた時間で2つの展示を見てきた。



国宝みうらじゅん いやげ物展 in TOKYO」と
メイド・イン・ジャパン南部鉄器 −伝統から現代まで、400年の歴史−

「国宝」・「ジャパン!」という言葉が共通してる、とかでは全然なく、
それぞれを思うところがあり、2つの展示を比較し、あれこれ言ってみたい。

まずは南部鉄器から。



南部鉄器は元々、17世紀半ば現在の岩手県北部を治めていた藩主南部家が、
鋳物師や釜師を京都などから招き、茶の湯釜をつくらせたのが始まりだそうだ。
この展示では南部鉄瓶の誕生と歴史、経緯だけでなく、どのようにして生活に持ち込めるのかをちょっとしたインスタレーション的な手法で見せている。



17世紀の段階で既に南部鉄瓶の素材と機能としては、ほぼ仕上がっており、文様などの変化はあるものの、基本的な型としては変化がない。
江戸時代のものはとにかく重厚で、見るからに重そうだ。

そんな南部鉄器は近代に入り、2つの変化が起きた。

生活に溶けこませるよう変容させる



ひとつは割れにくく耐久度の高さを保つ南部鉄器が鉄瓶以外にも広がって行くのだ。
灰皿や、組み鍋、洋鍋、生活雑貨と。その過程で日常的により用いられるためカタチに洗練さが加わって行く。

その代表格が柳宗理だ。柳宗悦の息子でもある宗理は、民藝における”用の美”を工業デザインとの連動を遂げることで親父の思想を受け継いでいる。(色々と反しているとの見方もできるけれども。)実際に、鉄器だけでなく北欧的な家具の中に柳宗理のデザインした食器やグラスと、南部鉄器がひとつのインテリアとして展示されている。確かに美しい。この食卓で食べるご飯は美味しいかも。であれば、近くに南部鉄器を用いた料理が食べれる場所があっても全然良い。そちらのほうが断然深く味わえる。用いられてこそ美しい。そして食べることは、体験として最高。

”遊び”を入れながら生活に取り込む



もうひとつの変化は色の着色だ。
驚くのがこれがフランスで火がついたということ。フランスではお茶を飲む文化が盛んだったことから、南部鉄器が日常的に使われていたのだ。しかも、自分達の好みに着色をしたりして。

ある日本人がフランスの街で、色とりどりの南部鉄瓶を見かけ、それを日本に逆輸入したいと思い立ったことから日本で知られるようなったのだとか。
今回のポスターのメインでもあるピンクのカラーポットは、フランスなど北米での限定商品として販売されていたものが、日本に逆輸入されたカラーポットなのだ。
(ちなみに色付けは鉄に樹脂で行っている。実現するまでに、実に3年。)

日本では素材を活かしつつ、北欧的な家具にも合うように洗練されたデザインとして、表面を変容していったのに対して、海外では南部鉄瓶自体に色を付けてしまった。しかもめちゃ派手。海外の人達が日本の伝統的なモノを、モノとしての質を堪能しながらも、より自由に愉しんで用いている好事例ではないだろうか。


 誤解は発明の母


日本の寿司が海外に確実に誤解されながら進行しているようだが、
中には日本の寿司にも負けず劣らず上手い寿司が生まれてもおかしくない。
(もちろん、オリジナルの寿司も食べて欲しいけども。)

「妄想ニホン料理」という最近お気に入りのNHKの料理番組がある。




日本の独特な名前を持った料理(がんもどき、親子丼)などを名前と絶妙なヒントだけで海外の料理人に作ってもらう番組である。この番組で、海外の料理人がオリジナルの料理を知らされる時の表情が好きだ。自分がどのぐらい間違っていたのかを愉しむ瞬間だから。

番組を見る限り、海外の料理人達は正解を当てにいってない。そんなわけないじゃん!とツッコミを入れたくなるような素材や方法で調理するも、めちゃめちゃ美味しそうに仕上げる。もはや新メニュー作りを愉しんでいるようだ。

海外の料理人はオリジナルの料理を知って、オリジナルも良いけど、自分の創った料理のほうがいいよねーとか、ニヤニヤしながら言う。日本料理も海外の料理人も試されているけどもニッコニコな状態。笑顔でツッコミを入れあってるわけだ。

ググってしまえば直ぐに”答え”を知れてしまう時代で、
知らないまま用ることは、贅沢なのかもしれない。
誤解は発明の母とは良く言ったものだ。

正確にはカラーポットは誤解からの誕生ではないけども、
その伝統的・権威的なモノに対して、どう愉しんでやろうかニヤニヤ、
という姿勢には共通するものがあるのではないか。

それにしても親子丼って名前改めてみると、
結構、残酷な名前だね。他人丼はそれはそれで雑な名前だけども。

ここまで来てようやく、みうらじゅんにバトンが渡る。
ただ長くなりそうなので、次回に持ち越す。

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